抹茶の国際調達を変えるJMEX出展、業務用市場で問われる供給力と品質管理の現在地
ニュースの概要
抹茶の仕入れと卸売を手がける日本抹茶輸出機構(JMEX)が、「三井物産流通グループフードショー2026」への出展を発表しました。出展場所は小間C-509です。今回の動きは、海外で広がる抹茶飲料や菓子の需要に対し、国内の生産者と食品メーカー、外食企業をつなぐ専門商社の役割を示すものです。抹茶は原料を確保すれば販売できる商品ではなく、茶園、加工場、保管、輸送、用途別の規格設計まで一体で考える必要があります。商談では、単価だけでなく、必要量をいつまで安定して届けられるか、色や香味をどの程度そろえられるかが重要な判断材料になるでしょう。
引用元: 抹茶の仕入れ・卸売の専門商社 日本抹茶輸出機構(JMEX)、「三井物産流通グループフードショー2026」に出展(小間C-509)(PR TIMES)
分析・見解
JMEXの出展で読み取るべき点は、抹茶が「珍しい和素材」から、調達条件を明確に管理すべき業務用原料へ移行していることです。抹茶の需要先は、茶道や専門店だけではありません。ラテ、アイスクリーム、焼き菓子、栄養補助食品、海外向けの即席飲料など、使用量も求められる品質も異なる分野へ広がっています。少量で香りを生かす商品と、乳製品や糖分の中でも緑色を保つ商品では、適した原料の選び方が同じではありません。
供給面では、抹茶の原料となるてん茶の生産に時間がかかる点が見落とされがちです。一般的な栽培では、摘採前に茶園を一定期間覆って日光を抑え、うま味成分や色合いを引き出します。その後、蒸熱、乾燥、茎や葉脈の除去、てん茶の保管、粉砕という工程を経ます。粉砕機の処理能力や稼働時間にも限りがあるため、需要が急増しても翌月に生産量を倍増できるわけではありません。ここに、抹茶の商談が一般的な粉末原料より難しい理由があります。
特に重要なのは、在庫量と供給可能量を同一視しないことです。倉庫に製品があっても、粒度、色、香味、残留農薬、微生物、原産地表示などの条件が買い手の規格に合わなければ、実際の生産には使えません。業務用では、初回納品の品質より、半年後や一年後にも同じ配合を再現できるかが製品開発の成否を左右します。専門商社が産地と加工工程を把握し、用途別に原料を振り分ける機能を持てば、メーカーは茶園ごとの調整を自社で抱えずに済みます。
技術面では、品質評価の数値化が今後の取引を変えます。色差計による明度や緑色の測定、含水率の確認、香気成分の分析、異物や微生物の検査を組み合わせれば、担当者の経験だけに依存しない受け入れ判断が可能です。ただし、数値が高ければ必ず良い抹茶というわけではありません。例えば、飲料では鮮やかな色が購買理由になっても、焼き菓子では加熱後の香りや苦味の残り方が優先されます。評価項目を用途別に設計することが、過剰品質によるコスト増を防ぎます。
輸出では、国ごとの食品規制や表示要件も加わります。残留農薬基準、アレルゲン管理、放射性物質に関する証明、賞味期限の設定、輸送中の温度と湿度の管理など、国内販売より確認事項が多くなります。さらに、抹茶は光、酸素、湿気の影響を受けやすいため、開封後の劣化を含めた包装設計が必要です。アルミ蒸着袋や窒素置換を採用しても、充填時の管理や販売現場での保管が不十分なら効果は限定的です。
独自の視点を一つ挙げるなら、抹茶商社の競争力は「最も高級な抹茶を持っているか」ではなく、「顧客の製造条件に合わせて品質の幅を設計できるか」に移っている点です。高価格帯の単一原料だけでは、量販商品の価格目標や海外工場の工程に対応できません。香りを重視するロット、色を重視するロット、年間供給を優先するロットを組み合わせ、代替原料をあらかじめ検証しておく方が、長期契約には強い仕組みになります。展示会はサンプルを配る場であると同時に、買い手の仕様を聞き出し、供給計画に反映する場でもあります。
今後は、産地の違いを伝える物語性と、製造ロットを追跡できる実務性の両立が求められます。単に「日本産」と表示するだけでは、海外の調達担当者は比較できません。品種、被覆期間、摘採時期、加工日、保管条件、粉砕方法、検査結果を整理し、用途ごとの推奨配合まで提示できれば、商談は価格交渉から共同開発へ進みます。JMEXの出展は、抹茶をブランド品として売るだけでなく、安定供給可能な食品原料として位置づけ直す機会になり得ます。
ビジネスへの影響
食品メーカーや外食企業にとって、今回の出展は新しい仕入れ先を探すだけの機会ではありません。まず商談前に、年間使用量、月別の需要、希望単価、色と香味の優先順位、納入形態、輸出先を一枚の仕様書に整理しておくべきです。「抹茶を使いたい」という相談では、供給側も適切な原料を選べません。飲料なら一杯当たりの使用量、菓子なら加熱温度と配合率まで示すと、試作品の精度が上がります。
次に、初回ロットの評価を本採用と分けることが重要です。サンプルで色や香りを確認した後、実際の製造ラインで混合性、沈殿、加熱後の風味、包装後の変化を検証し、合格基準を数値化します。採用時には、代替ロットの承認手順、価格改定の条件、納期遅延時の連絡方法、検査書類の提出範囲も契約に入れておくと、供給不足の際に現場が混乱しにくくなります。
調達を一社集中にするか、複数の商社や産地に分散するかも製品戦略で判断が分かれます。高級商品の味を守るなら単一産地の継続性を優先し、量販品なら複数ロットを使った味の基準作りが有効です。ただし、安価な原料への切り替えは色や苦味だけでなく、表示、検査、顧客の期待値にも影響します。販売計画と品質保証を切り離さず、年二回程度の見直しを前提に調達設計を組むことが、抹茶商品の継続販売を支えます。