抹茶輸出が過去最高へ、日本茶産業を変える需要拡大と供給再建の課題

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ニュースの概要

抹茶を使った飲料や菓子の普及を追い風に、日本茶の海外販売が大きく伸びています。報道によると、2025年の緑茶輸出量は1万トンを超え、輸出額も約364億円に達する見通しです。抹茶の原料となるてん茶の生産が増え、米国が主要な販売先となる一方、欧州を含む新たな地域にも需要が広がっています。ただし、国内では茶園の減少や摘採を担う人手不足が続き、売れる量を安定して作れるとは限りません。輸出の好調さは産業再生の機会であると同時に、供給網の弱点を映す警告にもなっています。

引用元: 世界的な抹茶需要が日本茶業界を押し上げ、輸出記録更新が鮮明に(Il Sole 24 Ore)

分析・見解

輸出額の伸びは、抹茶が高付加価値品へ移った証拠

今回の数字で重要なのは、輸出量だけでなく金額も拡大している点です。茶葉を大量に売る従来型の輸出では、価格競争に巻き込まれやすい。一方、抹茶は飲料、菓子、外食向けの材料として使われ、産地や栽培方法を説明することで単価を上げやすい商品です。粉末に加工されるため、茶葉の形が崩れていても新しい価値を与えられる点も強みです。

ただし、抹茶人気をそのまま日本茶全体の成長と捉えるのは危険です。海外の消費者が求めているのは、伝統的な一服の作法だけではありません。ラテ、アイスクリーム、プロテイン飲料など、日常的に使える原料としての抹茶です。日本側が用途別の品質や味の違いを整理できなければ、安価な代替品との比較に持ち込まれます。

てん茶増産だけでは埋まらない原料不足の構造

抹茶は、茶葉を日光から覆って育てた後、蒸して乾燥させ、茎や葉脈を取り除いて粉にします。この原料がてん茶です。てん茶への転換には被覆資材、専用機械、加工施設が必要で、普通の煎茶園をすぐ抹茶向けに変えられるわけではありません。摘採時期や葉の柔らかさも品質を左右するため、単純な面積拡大では限界があります。

さらに、茶園の減少は短期に解決できません。耕作放棄地を再利用する場合も、枝の更新、土壌の改善、作業道の整備に時間がかかります。収穫機を導入しても、傾斜地では使いにくく、地域の加工場が閉鎖されていれば運び先もありません。需要の急増が、生産者だけでなく加工業者や運送業者まで含む地域全体の弱さを露呈させています。

米国偏重から多地域販売へ、品質説明が競争力になる

米国は抹茶の飲用文化と外食市場が大きく、現在の伸びを支える中心市場です。しかし、一つの国への依存が高いと、関税、為替、表示規則、流通在庫の変化が売上を直撃します。欧州やアジア、中東へ販路を広げることは、売上の分散だけでなく、用途の異なる顧客を獲得する意味を持ちます。

その際に必要なのは、単に「日本産」と表示することではありません。品種、覆いの期間、収穫時期、色、苦味、カフェイン量、残留農薬検査の結果を、買い手が理解できる形で示すことが重要です。飲料メーカーには色の安定性、菓子メーカーには加熱後の香り、専門店にはうま味と余韻が求められます。用途ごとの仕様書を整えた産地や加工業者ほど、価格交渉で優位に立てるでしょう。

抹茶市場の次の競争は、量より安定供給の設計

今後は、栽培面積を増やすだけでなく、需要予測と生産計画を結び付ける仕組みが必要です。過去の注文量だけを基準にすると、人気商品の急伸に対応できません。輸出業者、飲料メーカー、生産者が複数年契約を結び、最低購入量と品質基準を共有すれば、農家は被覆設備や摘採機に投資しやすくなります。

同時に、在庫を持つ判断も変わります。抹茶は香りや色が劣化しやすく、長期保管すればよい商品ではありません。低温保管、酸素や光を抑える包装、ロットごとの検査を組み合わせ、売れる時期と品質を両立させる必要があります。抹茶ブームの本質は、伝統産業が突然大量生産産業になることではなく、限られた原料を高い精度で配分する産業へ変わることにあります。

ビジネスへの影響

企業は販売先より先に、原料の確保条件を決める

抹茶を使う飲料、菓子、外食企業にとって、最大のリスクは販売不振ではなく、採用した商品を継続生産できないことです。まず必要量を年間合計で見るのではなく、月別の使用量、色や香りの許容範囲、代替可能な原料の有無に分けて整理します。そのうえで、単一業者への依存を避け、産地や加工会社を複数持つことが現実的です。

価格だけで仕入れ先を選ぶと、供給が逼迫した際に優先順位を下げられる可能性があります。複数年契約、前払いの一部導入、設備投資への協力など、生産側が増産しやすい条件を提示する企業は、短期の相場競争より安定した調達を得やすくなります。契約時には、天候不順、品質未達、輸出規制、納期遅延が起きた場合の分担も明文化すべきです。

輸出拡大には、国別の表示と商品設計が欠かせない

海外展開では、同じ抹茶商品を翻訳して売るだけでは不十分です。米国ではカフェや健康志向の商品との組み合わせ、欧州では原材料表示や有機認証への関心など、購入理由が異なります。企業は国ごとに、業務用原料、家庭用小容量品、完成品のどこを狙うかを決める必要があります。

また、輸出前に残留農薬、微生物、重金属、表示言語、賞味期限の条件を確認し、検査記録をロット単位で保存すると、取引先の審査を通しやすくなります。高単価化を目指すなら、産地名だけでなく、使い方、味の特徴、栽培履歴を一体で伝えることが重要です。需要が強い時期こそ、売上目標だけでなく、原料確保率、納期遵守率、返品率を経営指標に加えるべきです。

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