米国の抹茶需要急増で日本の供給網はどう変わるか、てん茶高騰から読む茶業界の次の一手

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ニュースの概要

米国で抹茶の需要が急速に伸び、日本の生産と加工がその勢いに追いついていない。2025年の日本茶輸出額は721億円と過去最高を更新し、米国向けが全体の35%を占めた。輸出を押し上げた中心商品は、飲料だけでなく菓子や外食向けにも使われる抹茶関連商品だ。一方、原料となるてん茶の価格は、2024年の1キロ5,678円から2025年には14,681円へ上昇した。需要拡大は産地に好機をもたらすが、茶園の転換、加工設備、人手、品質管理には時間がかかる。海外向けの増産と、国内で手頃な抹茶を安定して供給する仕組みをどう両立するかが、業界の大きな課題になっている。

引用元: 米国での抹茶需要急増と日本の供給逼迫(Forbes)

分析・見解

てん茶価格が2.6倍になった理由は畑だけではない

てん茶は、摘み取り前に茶園を覆って日光を抑え、摘んだ葉をもまずに乾燥させた抹茶の原料である。一般的な煎茶より工程が多く、急に生産量を増やせない。覆いを設置する資材や作業員が必要で、収穫後には葉を細かく加工する設備も要る。価格が1キロ5,678円から14,681円へ上がったのは、米国の注文が増えたからだけではない。茶園の高齢化、肥料や燃料の上昇、加工能力の不足が同時に表れた結果だ。

しかも抹茶は、茶葉を粉にすれば完成する商品ではない。色、香り、苦味、粒の細かさをそろえる必要があり、加工場ごとの調整力が品質を左右する。原料を確保できても、石臼や粉砕機の処理能力が足りなければ出荷量は増えない。供給不足の本質は、畑の面積よりも、畑から輸出港までの各工程が連動していない点にある。

米国の需要は飲み物から食品原料へ広がっている

米国では抹茶が専門店の飲料にとどまらず、ラテ、アイスクリーム、焼き菓子、栄養食品などに使われている。ここで重要なのは、一杯ごとの消費ではなく、食品メーカーが継続的に原料を買う構造が生まれたことだ。小売店の流行なら人気が落ち着けば需要も縮む。しかし原材料として配合されると、契約や商品計画を通じて注文が長期化しやすい。

この変化は、産地にとって輸出単価を上げる機会である一方、品質のばらつきを許しにくくする。飲料店は味を調整できるが、菓子メーカーは色味や香りの変化が製品全体に影響する。米国側が求めるのは「抹茶があること」だけではなく、毎回同じ性能で使える原料だ。生産者と加工業者には、茶園ごとの記録、収穫時期の管理、残留農薬検査を組み合わせた供給体制が必要になる。

増産の成否を分けるのは茶園転換と加工設備の同期

海外需要に応えるには、既存の茶園でてん茶を増やす方法と、耕作放棄地を含む新たな土地を活用する方法がある。ただし、煎茶向けの茶園をてん茶向けに変えるだけでは不十分だ。覆いを設置し、摘採の時期を調整し、荒茶を作る設備までそろえる必要がある。収益が見込めるからと転換を急げば、品質の安定前に原料だけが増える恐れもある。

現実的なのは、地域単位で生産計画と加工能力を合わせることだ。複数の生産者が共同で覆い資材や収穫機を使い、加工場が受け入れ量を事前に示す。さらに、輸出向けの高品質品と、菓子や飲料向けの業務用を分ければ、限られた原料を用途に応じて配分できる。単純な面積拡大より、工程全体の詰まりを解消する投資の方が早く効果を出しやすい。

輸出拡大と国内価格の安定を同時に設計する

米国向けが輸出額の35%を占める状況では、海外価格に引っ張られて国内の抹茶や茶飲料まで値上がりする可能性がある。輸出で得た収益を生産設備や人材に戻せなければ、産地は一時的な高値を得るだけで、次の不作や需要急増に耐えられない。輸出企業には、目先の販売量ではなく、複数年の調達契約と在庫計画を組み合わせる姿勢が求められる。

一方、国内市場を低採算のまま扱う必要もない。家庭用には価格を抑えた商品、専門店には産地や品種を明確にした商品を用意し、用途ごとの価値を分けるべきだ。海外需要を国内の品不足に直結させないには、輸出量を増やすことと同じくらい、規格別の在庫を持つ仕組みが重要になる。

ビジネスへの影響

食品企業は契約量より代替可能性を先に確認する

抹茶を使う飲料、菓子、健康食品の企業は、単一の商社や産地に依存しない調達計画を作る必要がある。確認すべきは年間の提示数量だけではない。収穫が遅れた場合の代替原料、色や苦味の許容範囲、検査結果の提出時期、価格改定の条件まで契約に盛り込むべきだ。抹茶は産地や加工方法で風味が変わるため、別の商品で使う前提ではなく、試作品で配合を検証しておくことが欠かせない。

輸入業者や外食企業は、粉末の在庫日数を増やすだけでは対応しにくい。長期保管では香りが弱くなるため、発注時期と保管温度、開封後の使用期間を管理する方が実務的である。価格上昇を吸収できない商品では、内容量、提供方法、抹茶の使用量を見直し、品質を落とさず原価を調整する設計が必要になる。

生産者と加工業者は高値より再投資の使い道を決める

茶農家にとって価格上昇は、茶園の更新や覆い資材への投資を進める好機だ。ただし、需要が永続するとは限らない。米国の流行が落ち着いた場合にも返済できるよう、設備投資は複数年の販売契約や共同利用を前提に判断したい。個別農家がすべてを抱えるより、地域の加工場、農協、輸出事業者が役割を分ける方が稼働率を高めやすい。

加工業者は、粉砕機の増設だけでなく、検査とロット管理に予算を配分する必要がある。輸出先が増えるほど、食品安全の証明や表示対応が取引条件になるからだ。生産履歴を記録し、どの茶園の原料がどの商品に使われたか追える状態にすれば、品質問題が起きた際の回収範囲も抑えられる。

輸出企業は「売れる量」から「続けられる量」へ転換する

輸出企業の判断基準は、注文を取れるかどうかから、安定して納め続けられるかどうかへ移る。米国の大口顧客には、短期の追加注文をすべて受けるのではなく、確保できる数量を明示し、用途別に優先順位を付ける方が信頼を守れる。産地の増産計画、加工場の処理能力、港湾までの輸送日数を一つの計画にまとめれば、無理な販売による欠品を防げる。

今後は、抹茶を単なる流行商品ではなく、供給網全体で育てる輸出品として扱える企業が有利になる。米国での需要が続く間に、契約、検査、在庫、設備投資を整えられるかが、売上高以上に競争力を左右する。

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