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日本産抹茶の供給不足はなぜ長期化するのか?米国需要急増と価格高騰の構造を読み解く

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ニュースの概要

日本産抹茶をめぐる品薄感が一段と強まっている。業界メディアの報道によれば、日本の緑茶輸出額は今年上半期に過去最高を更新したが、内訳を見ると抹茶を含む粉末茶が輸出額の大半を占め、とりわけ米国向けの伸びが牽引役になっているという。カフェのラテやスイーツ向けに使われる業務用抹茶の仕入れ価格は、この2年で大幅に上昇したとも伝えられる。輸出ビジネスとしては追い風である一方、原料となる茶葉の生産量が需要の伸びに追いつかず、供給不足が新たな経営課題として浮上している構図だ。背景には、抹茶特有の栽培方法が持つ構造的な制約があるとみられる。

引用元: 日本産抹茶の供給不足が鮮明に、米国向け需要で価格高騰が続く(Reuters / industry media)

分析・見解

てん茶という最大のボトルネックが抹茶不足の正体

抹茶の原料となる「てん茶」は、新芽を覆いで日光から遮って育てる覆下栽培(おおいしたさいばい=茶畑に黒い寒冷紗をかけて日光を遮る栽培方法)が必須で、一般の煎茶より手間も収穫量も不利になる。新たに茶園を覆下栽培に切り替えても収量が安定するまで数年かかり、需要が急伸したからといって翌年すぐに供給量を倍増できる作物ではない。今回の逼迫は、価格が上がれば増産できるという通常の市場原理が働きにくい、典型的な供給非弾力性の表れだと見るべきだ。

緑茶輸出の中身が「葉っぱ」から「粉」へ急速に転換している

今回のニュースで見落とされがちなのは、輸出額の記録更新そのものより、その中身の変化である。粉末茶が輸出額の大半を占めるという事実は、日本茶輸出が伝統的なリーフ茶からスイーツ・飲料原料としての抹茶パウダーへと主役を交代させつつあることを示す。これは一過性のブームではなく、海外の飲食業態(抹茶ラテ、抹茶スイーツ)が定番メニュー化した結果の構造変化であり、今後も粉末需要が輸出全体を牽引する可能性が高い。

米国の抹茶ブームが国内の需要者間に価格競争を生んでいる

米国向け需要の強さは、カフェ向けの業務用抹茶と、茶道で使われる高級抹茶が、同じ限られたてん茶原料を奪い合う構図を生んでいる。輸出価格が国内相場を押し上げれば、国内の菓子店や茶道具店も同じ原料をより高い価格で調達せざるを得なくなる。これは半導体や木材でも見られた「輸出主導の国内逼迫」と同じパターンであり、農産物でも同様の現象が起き得ることを示す事例だ。

カカオやバニラの前例が示す価格高騰の長期化シナリオ

過去にはカカオやバニラでも、天候不順や需要急増を引き金に数年単位で高値が続いた前例がある。抹茶も同様に、覆下栽培への転換や新規茶園の育成には時間がかかるため、価格が落ち着くまでには複数年を要する可能性が高い。短期的な需給調整では解決しない構造問題として捉える必要がある。

ビジネスへの影響

調達ルートを「茶道グレード」と「カフェグレード」で分けて多重化する

抹茶を仕入れる飲食・菓子事業者は、産地や等級を一本化せず、京都・西尾(愛知)・鹿児島など複数産地から調達ルートを確保し、価格高騰時にも代替できる体制を整える必要がある。カフェ向けの低グレード抹茶は茶道用の高級抹茶ほど希少ではないため、用途に応じた等級の使い分けがコスト管理の鍵になる。

長期契約と前払いで価格変動リスクを抑える

生産者との複数年契約や、収穫前に価格と数量を約束する先渡し契約(さきわたしけいやく)を結ぶことで、その都度の市場価格(スポット価格)が急騰するリスクを避けられる。大手カフェチェーンの一部はすでにこうした契約を進めているとされ、中小事業者も生産者団体や商社を通じた共同調達を検討する価値がある。

原料高を前提にしたメニュー価格とブランド価値の再設計

抹茶の希少性自体を商品価値として打ち出し、価格転嫁を正当化するブランディングも有効な選択肢だ。「限定産地」「希少なてん茶使用」といった訴求は、単なる値上げではなく付加価値として顧客に受け入れられやすい。

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